子宮内膜症の基礎知識:症状・検査・治療・妊娠への影響

子宮内膜症の発生部位、原因とリスク、月経痛などの症状、検査や治療の選び方、妊娠の可能性、日本の医療費制度まで幅広く解説します。

子宮内膜症とはどのような病気?

子宮内膜症は、子宮の内側を覆う内膜に似た組織が子宮の外で増える慢性的な病気です。病変の周囲で炎症や癒着が起こり、長く続く痛みなどにつながることがあります。人から人へうつる感染症ではありません。

思春期から症状が始まることもあり、目立った自覚症状がない場合もあります。WHOは、生殖年齢の女性のおよそ10人に1人が影響を受けていると推計しています。

病変ができやすい場所

主な発生部位は骨盤内の腹膜、卵巣、子宮と直腸の間などです。深い場所にできる病変では、腸や膀胱、尿路に関わることもあります。骨盤外に生じるケースは比較的まれです。

排便時や排尿時に痛むなど、症状は病変の場所によっても異なります。同じ病名でも、全員に同じ症状が出るわけではありません。

原因と関係する要因

明確な原因はまだ解明されていません。月経血が卵管を通って骨盤内へ逆流する現象のほか、細胞の変化、免疫、炎症、ホルモンの関与が研究されています。月経血の逆流があっても、必ず発症するわけではありません。

家族に患者がいること、初経が早いこと、月経周期が短いことなどが関連要因とされています。ただし、いずれも個人の診断には使えず、本人の生活習慣のせいだと決めつけることはできません。

月経時によくみられる症状

月経痛が年々強くなる、学校や仕事を休むほど痛い、鎮痛薬でも日常生活が難しいといった場合は相談する目安になります。腰痛、吐き気、疲労感、腹部の張り、経血量の増加を伴うこともあります。

生活に支障をきたす痛みを「生理だから仕方ない」と片づける必要はありません。一方、月経痛にはほかの原因もあるため、痛みだけで確定診断はできません。

月経以外の痛みと無症状のケース

月経の時期以外の骨盤痛、排便痛、排尿痛、性交痛、周期に合わせて変わる消化器症状などが現れる場合があります。不妊の検査で初めて分かる人もいます。

病変が広がっていても痛みが少ない人がいる一方、小さな病変でも強い痛みを感じる人がいます。症状がないからといって必ず否定できる病気ではありません。

卵巣のチョコレート嚢胞とは?

卵巣に子宮内膜症ができると、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)と呼ばれる嚢胞が生じることがあります。超音波検査などでほかの卵巣嚢胞との違いを確認します。

手術の判断は大きさだけで決まりません。画像所見、症状、合併症の可能性、年齢、妊娠の希望を総合的に考えます。突然の激しい下腹部痛、意識が遠のく感じ、嘔吐が続く場合は速やかに医療機関へ相談してください。

婦人科を受診するタイミング

月経痛が悪化している、骨盤痛が繰り返される、日常生活に支障がある、排便や排尿のときに痛む、妊娠を希望しているのになかなか妊娠しないといった場合は受診を検討しましょう。卵巣嚢胞を指摘されている場合は決められた経過観察を続けてください。

月経日、痛む場所と程度、使用した薬、日常生活への影響などをメモしておくと、医師に状況を伝えやすくなります。

受診時には何を調べる?

まず月経周期や痛みの出る時期、手術歴、家族歴、妊娠の希望などを確認します。必要に応じて内診や画像検査を提案しますが、検査は適切な説明と同意のもとで行われます。経腟超音波が難しい、または希望しない場合には、経腹超音波などの選択肢を相談できます。

不安や痛みがあるときは遠慮なく伝え、検査の目的とほかの方法について説明を求めてください。

超音波・MRI・CA125・腹腔鏡

超音波では卵巣の嚢胞や一部の深部子宮内膜症を調べます。MRIは病変の位置や広がりの確認に役立つことがあります。ただし、超音波で異常が見えなくても、小さな病変などは否定できません。

血液のCA125は別の理由でも上昇するため、この数値だけで診断してはいけません。腹腔鏡検査・手術を検討する場合もありますが、すべての人が治療前に手術を受ける必要はありません。

ステージ分類で分かること

r-ASRM分類は手術時に確認した病変や癒着などをもとに、病状を4段階で表す方法です。進行度の記録には役立ちますが、痛みの強さや個人の妊娠の可能性をそのまま表すものではありません。

軽症と分類されても痛みが強い場合があります。治療はステージだけでなく、症状、画像所見、生活への影響、妊娠の希望などで判断します。

治療の目標を決める

現在、子宮内膜症を必ず完治させる方法はありません。痛みを軽減する、日常生活を過ごしやすくする、合併症を防ぐ、妊娠に向けて方針を立てるなど、何を重視するかによって治療が変わります。

年齢、持病、検査結果、副作用への考え方、妊娠の時期について医師と相談し、状況に合わせて方針を見直しましょう。

鎮痛薬とホルモン療法

状況に応じて非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬が使われます。ホルモン療法には、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、プロゲスチン製剤、ホルモン放出型子宮内システム、GnRHに作用する薬などの選択肢があります。

ホルモン療法は痛みの軽減に役立つ一方、妊娠を目指している間に自然妊娠率を高める目的では用いません。副作用や使用できない条件があるため、自己判断で開始・中止せず専門家と相談してください。

手術が検討されるのはどんなとき?

適切な治療を受けても痛みが続く場合、深い病変や一部の卵巣嚢胞がある場合、妊娠に関わる特定の状況などでは手術を検討します。腹腔鏡下で病変や癒着を処置できることがありますが、再発の可能性は残ります。

卵巣嚢胞の手術は卵巣予備能に影響する場合があります。嚢胞の大きさだけで一律に手術を決めるものではなく、生殖補助医療の前に手術をしても必ず妊娠率が上がるわけではありません。利点と不利益を確認することが大切です。

子宮内膜症があっても妊娠できる?

はい。子宮内膜症があっても自然に妊娠する人は多くいます。ただし炎症、癒着、卵巣や卵管への影響によって妊娠しにくくなる場合があります。診断名やステージだけで一人ひとりの妊娠の可能性は決められません。

妊娠を希望する場合は卵巣予備能、卵管の状態、パートナー側の要因も含めて評価し、経過観察、必要に応じた手術、人工授精や体外受精などを検討します。妊娠そのものを子宮内膜症の治療として勧めるべきではありません。

日本での検査・治療費は?

日本では、医学的に必要な子宮内膜症の検査や治療の多くが、適用条件を満たせば公的医療保険の対象となります。自己負担額は年齢、保険資格、検査や薬の種類、入院日数、保険適用外の診療の有無などで異なります。

費用が高額になりそうなときは、病院の相談窓口や保険者に高額療養費制度について確認しましょう。古い記事にある金額をそのまま現在の自己負担額と考えないことが大切です。

長期的な通院と診察で聞きたいこと

薬をやめたり手術を受けたりした後にも、症状が再び現れることがあります。嚢胞や深部病変がある場合などは、医師と相談して診察や画像検査を続けましょう。痛みが変化したら早めに伝えてください。

診察では「なぜ子宮内膜症を疑うのか」「超音波やMRIは必要か」「手術以外の治療は可能か」「妊娠を希望するとき薬はどう変わるか」「手術で卵巣予備能に影響はあるか」「次はいつ受診すべきか」を確認すると役立ちます。この記事は一般情報であり、個別の診断に代わるものではありません。